樂家当主が綴った、茶室の建築日記。
2019.04.28
淡交社 樂 吉左衛門・著
滋賀県にある美術館といえば、
「滋賀県立近代美術館」「MIHO MUSEUM」「佐川美術館」といったところか。
「滋賀県立近代美術館」は、全面建て替えのため休館中なのだが、
工事費の値上がりのため、予算繰りができず、
着工のメドが全くたたない、というかなり寂しい状態だ。
さて、この本。
佐川美術館に、2007年に建てられた茶室の5年にわたる建築記録。
設計をした千家十職・樂家15代吉左衛門氏の日記やメールのやりとりを、
まとめたものだ。
この本を読んだのは、何年も前のことだが、
メソンを始めて何回かのリニューアル工事を経験してきた僕にとっては、
かなり衝撃的だった。
「ん~、建築ってこんなに緻密に向き合わないといけない世界だったか…」
客室などを考える際、
どうしてもデザインと機能を優先して考えがちだ。
でも大切なのは、「なんのための客室か」だと思ってきた。
その上で、デザイン・機能なわけだ。
この考え方は正しいと思うが、
「なんのため」の思考の膨大さに驚く。
氏は「もともと始めから完成への設計図など持ち合わせぬ、
まるで即興演奏のような思考とアイディアのスイングに頼って推し進めてきた
そのやり方は、茶わん作りと変わらぬ生来のもの」だという。
なにもないところに「即興」が成り立つわけもなく、
即興演奏には、「広大な問題意識と膨大な知識の蓄積」なのだと思う。
つまり、日ごろからいろんなものを見聞きし、
ちゃんと考えていることが必要なのでしょう。
「ハナレ」の部屋を作る際、キーワードの一つに
「茶室」が出てきていました。
もしかすると、この本に影響を受けていたのかもしれません。